意外と知らない?社長に賞与を出す方法~大阪市中央区天満橋の税理士通信~

GWが近づき、社員の賞与について考え始めている社長も多いのではないでしょうか?

従業員は賞与があっていいですよね。儲かったら社長もボーナス欲しいですよね?

意外に知られていませんが、実は社長に賞与を出す方法があります

原則として、役員は毎月定額の役員報酬しか認められていないのですが、

「事前確定届出給与」という制度を使えば、社長のボーナスも合法的に経費になります。

今回は、社長の賞与を出す方法について、詳しくお伝えします。

この記事を読むと、社長への賞与を出す制度とその手続き方法がわかりますので、

今すぐ活用しましょう!

社長に賞与を出せない理由

まず、社長には賞与を出せないと思っている方が多いと思いますが、

支給が禁止されているわけではありません。

支給してもいいのですが、一定の要件に該当しない場合は、

法人税等を計算する上で損金にできないというルールになっているので、

出せないと思われている方が多いようです。

損金に算入できない理由

役員の報酬については、利益の調整を防止するため、損金として認められるルールが厳密に決められています。

役員報酬の金額を自由に変動できることを認めてしまうと、

儲かっているときは役員報酬を増額し、赤字になりそうなら減額するといった調整ができます。

例えば、3月決算の法人で、3月までの予測利益が100万円になりそうな場合、

3月に100万円の役員賞与を出すと、利益は0円となり法人税も0円(地方税の均等割を除く)となります。

こうなると明らかに利益調整が出来てしまいますよね。

それを防ぐため、損金にできる役員報酬は限られています。

損金に算入できる役員報酬とは?

損金に算入できる役員報酬は、下記の3つとなります。

1.定期同額給与

これは、「その支給時期が1カ月以下の一定の期間ごとである給与で、

その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの」

もしくは「その他これに準ずるものとして政令で定める給与」をいいます。

簡単にいうと、役員報酬は毎月同額の金額を支給するというイメージです。

2.事前確定届出給与

これは、「所定の時期に、確定した額の金銭等を交付する旨の定めに基づいて支給する給与」で、

事前に税務署に届出をして支給する給与のことです。

具体的には、支給する金額・支給する日付を記載した届出書を税務署に期限内に提出し、

記載通りの金額・日付に支給した場合、損金として認められます。

3.業績連動給与

これは、会社の業績に連動して支給する給与のことです。

しかし、有価証券報告書を提出する法人(株式公開会社)に限定されているので、

該当する中小企業は少なく、詳細は割愛します。

賞与として支給するなら、事前確定届出給与!

という事で、役員賞与を支給するのであれば、

上記「2.事前確定届出給与」となりますね。

では、支給する際の注意点について説明します。

注意点①支給額と支給日を決める

事前に支給額と支給日を決めなければなりません

これらを決め、株主総会等で決議する必要があります。

注意点②税務署に届出書を提出する

①で決めた金額・支給日を記載して、提出期限内に税務署に届出書を提出しなければなりません

提出期限は、次の2つの日のうち、いずれか早い日です。

 A.株主総会等の決議日から1ヶ月を経過する日

 B.新たな事業開始日から4ヶ月を経過する日

例えば、3月決算の法人の場合(株主総会が5月25日だった場合)、

Aは6月25日、Bは7月31日となり、Aの6月25日が提出期限となります。

中小企業の場合は、主にAの株主総会等の決議日から1ヶ月以内

提出期限となることが多いです。

注意点③届出書どおりに支給する

①と②で事前に税務署に提出した届出書どおりに、支給しなければなりません

金額・支給日のどちらか一方でもズレてしまうと、損金として認められなくなります。

また、支給日を複数設定している場合(例えば7月25日、12月25日)、

7月25日は届出どおり支給したとしても、12月25日に届出どおり支給できなかったとすると、

12月の賞与は損金不算入になるのはもちろん、7月の賞与も損金不算入となってしまいます。

つまり、支給日を複数設定したら、すべて届出書どおりの金額・支給日にしなければならないので、

注意が必要です。

事前確定届出給与は節税になるのか?

ここで、事前確定届出給与を使った役員賞与が節税になるのか気になるところですね。

結論から言うと、役員賞与が損金になれば、法人税等の節税になります。

大幅に利益が出ると予測できる場合は、届出書を提出することは有効ですね。

ただし、社長自身の所得税・住民税や社会保険料などは増加するので、

個人の税負担は増えることとなります。

この辺りは、法人税と社長自身の所得税とのバランスを考える必要がありそうです。

まとめ

いかがだったでしょうか。

社長にも賞与を支給することはできますし、

一定の要件を満たせば、法人税の計算上、損金に算入することもできるので、

ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。

ちなみに、届出書どおり支給したとしても、あまりに高額な賞与の場合は、

損金として認められない可能性もありますので、社会通念上妥当な金額を設定してくださいね。